新日本保険新聞 連載 補足資料

まずは、課題発見。

損保代理店の皆様へ ── お客様のリスクを整理する手がかりに

新日本保険新聞 連載「まずは、課題発見。」をお読みいただき、ありがとうございます。

このページでは、新聞連載を補足し、損保代理店の皆様に少しでも役立てていただける情報を掲載してまいります。連載が進むごとに、追記してまいります。

安心見える化™面談支援ツール(開発中)この連載の「リスクの5分類」を、面談で使える画面と書面にしています。デモをご覧いただき、代理店実務からのご意見をお聞かせください。実際の画面とデモを見る →開発協力代理店 募集中 →
Five Categories

リスクの5分類 ── お客様との「共通言語」

複雑に見える損害保険も、リスクという視点で捉え直すと、大きく5つに分けられます。お客様は商品名で自社のリスクを考えてはいません。だからこそ、商品ではなく、この5つのリスクから話を始める。それが「伝わる」提案の第一歩です。

01ヒト

従業員のケガや病気、役員の万一。会社を動かす「人」のリスク。

02モノ

建物・設備・商品・貨物。事業の土台となる「財物」のリスク。

03賠償責任

他人の身体や財物、情報に与えた損害への、法律上の責任。

04利益(費用)

事故の「結果」で失われる利益や、よけいにかかる費用。

05自動車

事業に欠かせない車。実は上の4分類の組み合わせ。

この5つを引き出しに見立て、お客様の保険証券を並べてみる。それだけで、何が守られていて、何が抜けているか、何が重複しているかが、お客様ご自身の目にも見えてきます。

Summary

連載のあらすじ

01なぜ今、“課題発見”なのか

お客様は、損害保険に興味がありません。届いた保険証券が封筒に入ったまま、ということも珍しくない。だからこそ、気づかれていないリスクに気づいていただくことが、代理店の使命です。課題を解決するには、その前に課題が何であるかを見つけなければなりません。課題発見が先です。

2026年6月1日の制度対応を一つの契機に、意向把握や、比較・推奨の理由の説明、その過程の記録といった実務のあり方が、これまで以上に問われています。その出発点が、課題発見です。

026月1日、リスクを5つに分けるということ

「保険に入りたい」というたった一言の背後に、いくつものリスクが隠れています。お客様は商品名で自社のリスクを考えてはいません。一方で、募集人はどうしても商品名から考えてしまう。このズレが、「伝わらない」を生んでいるのではないでしょうか。

複雑に見える損害保険のリスクは、「ヒト」「モノ」「賠償責任」「利益(費用)」の4つの基本に整理できます。私はこれに、その組み合わせである「自動車」を独立させた5分類を、お客様との共通言語として使っています。リスクから入る提案は、お客様の事業に沿った提案になる。改正法が掲げる「顧客本位」とは、突き詰めればこういうことだと思うのです。

03最初の問いかけが、課題発見を決める

課題発見は、面談が始まる前から始まっています。訪問先ホームページの「社長あいさつ」や「お客様の声」、所在地のハザードマップ。そこから課題の仮説を立てておくからこそ、「新しい事業を始められて、万一止まると一番困るところはどこですか」と踏み込んだ問いができます。準備とは、お客様への敬意の表明でもあります。

入口の言葉も、面談を左右します。「見直し」には、今の保険——そしてそれを選んだお客様の判断——への否定のニュアンスが入る。だから「点検」「棚卸し」と言い換える。「備えていますか」で終わる問いではなく、「もし起きたら、何が一番困りますか」と結果を想像していただく。向かいに立って点数をつけるのではなく、セカンドオピニオンとして隣に立つ。問いの質が変われば、お客様の答えが変わり、その中にお客様自身も気づいておられなかった課題が眠っています。

04保険証券は、「返すもの」がなければ預かれない

課題発見とは、お客様のリスクと、今の備えを照らし合わせることです。リスクの側は問いかけで見えてきますが、備えの側は保険証券がなければ、特約の有無ひとつ正確にはわかりません。ところがこの扉は、すんなりとは開きません。お客様がためらう理由は4つ——「面倒くさい」「見せたくない」「今の契約を否定されるのではないか」「渡したら、後戻りできないのではないか」。表に出てくるのは「今度探しておくよ」の一言だけですが、4つのうち3つは、手間ではなく不安です。

そしてこの不安は、理不尽なものではありません。「証券を見せてください」という言葉が、長いあいだ見積もりの入口、つまり切替提案の入口を意味してきたからです。だとすれば、証券が出てこないのは頼み方の巧拙の問題ではなく、引き換えに「返すもの」を持っているかどうかの問題です。5分類で整理した一覧表——言わば備えの健康診断——を先にお見せする。返ってくるものが点検の結果だと見えれば、証券は「渡すのが不安な書類」から「点検のための材料」に変わります。

Episode 03 Supplement

第3回 補足 ── 面談の入口チェックリスト

第3回「最初の問いかけが、課題発見を決める」の実務補足です。訪問前の準備から面談冒頭のひと言まで、そのまま使える形に整理しました。

会う前の仮説づくり
  • 訪問先ホームページの「社長あいさつ」「お客様の声」を読む——経営者がいま何を大事にし、どこへ向かおうとしているかが、本人の言葉で書かれています
  • 新しい工場、海外取引、若い職人の採用。その一つひとつがリスクの芽です
  • 所在地のハザードマップを手元に用意する——水災や土砂災害への問いかけが変わります

仮説があるから、踏み込んだ問いができる。商談の成否は、その場に臨む前の準備で大半が決まります。

つい言いがちな言葉言い換えの例なぜ言い換えるのか
保険の見直しをしませんか保険の点検・棚卸しをしてみませんか「見直し」は今の契約と、それを選んだお客様の判断への否定に聞こえることがあります
〜に備えていますか?もし〜が起きたら、何が一番困りますか?「はい・いいえ」で終わらず、お客様が結果をご自身の言葉で語り始めます
この保険はダメですねいまの契約を尊重しながら、別の視点で一緒に確認しましょう隣に立つセカンドオピニオンの姿勢が、安心して確認できる場をつくります
そのまま使える問いかけ例
  • 「もし、工場が火災で数か月止まったら、御社にとって一番困ることは何でしょうか」
  • 「もし、納めた製品に欠陥が見つかり、取引先からクレームが来たら、どうなりそうですか」
  • 「社長、最近ヒヤッとしたことはありませんでしたか」

リスクが起きた「結果」を想像していただくと、リスクは「自分ごと」になります。5分類は、そのときお客様の語りを整理する羅針盤です。

Episode 04 Supplement

第4回 補足 ── 保険証券のお預かり

第4回「保険証券は、『返すもの』がなければ預かれない」の実務補足です。お客様がためらう理由と、その場で使える依頼の言葉、お預かりの実務を整理しました。

お客様がためらう4つの理由
  • 面倒くさい——探してそろえることが手間。4つのうち、これだけが手間の問題です
  • 見せたくない——保険料や補償は、会社の内情に関わる情報でもあります
  • 今の契約を否定されるのではないか——長年の付き合いで加入してきた保険の間違いや無駄を、指摘されたくない
  • 渡したら、後戻りできないのではないか——証券を渡せば話が進み、断りづらくなるという警戒

表に出てくるのは「今度探しておくよ」の一言だけ。しかし4つのうち3つは、手間ではなく不安です。そしてその不安は、「証券を見せてください」が長く見積もりの入口を意味してきた、この業界が自ら育ててきた条件反射でもあります。

つい言いがちな言葉言い換えの例なぜ言い換えるのか
保険証券を見せていただけますかお預かりした証券は、この形に整理してお返しします依頼の前に「返すもの」を示すと、証券は渡す書類から預ける材料に変わります
見直しのために証券を点検のために証券を依頼の一言にも、切替の気配を含めないためです
全部そろえておいてくださいお手元にあるものだけで結構ですそろえる手間が、そのまま先延ばしの理由になります
コピーをお願いできますかご了承いただければ、この場で撮らせていただきますコピーの依頼は、お客様の手間を増やしてしまうことがあります
そのまま使える依頼のひと言
  • 「お預かりした証券は、この形に整理してお返しします。御社のリスクに対して今どんな備えがあり、どこに抜けや重なりがあるかが、一目でわかるようになります。言わば、御社の備えの健康診断です」
  • 「お預かりした情報は、秘密厳守でお取り扱いします」
  • 「全部そろわなくても構いません。お手元にあるものだけで結構です」

言葉だけで説明するのではなく、5分類で整理した一覧表の見本を実物でお見せする。それだけで、お客様の反応は目に見えて変わります。

お預かりの実務チェックリスト
  • 証券は裏面まで——特約の記載が裏面にあることがあります
  • 変更手続きの書類や特約の明細もあれば、より正確に確認できます
  • ご了承を得たうえで、その場で写真を撮らせていただく——お客様の手間が減ります
  • お預かりした情報の管理には、細心の注意を払う
  • 適正に備えができているところは、しっかり評価してお伝えする——「ここは、きちんと守られています」

粗探しではなく、現状を一緒に確認する第三者の目に徹する。その姿勢が伝わってはじめて、「見直されてしまうのではないか」という不安は解けていきます。

今月の問いかけ

あなたが次に、保険証券のお預かりをお願いする場面を思い浮かべてみてください。証券と引き換えに、お客様に何をお返しできるでしょうか。見積もりでしょうか。それとも、現状の点検でしょうか。

Case

5分類で、何が見えるか

ある印刷会社の話をさせてください。その会社は、火災保険にしっかり加入していました。「モノ」は守られていたのです。しかし、「利益(費用)」が抜けていました。機械が被災した際、修理期間中の資金繰りが行き詰まり、五十年続いた事業を畳まざるを得なくなりました。

機械という「モノ」は保険金で再建できた。けれども、事業が止まっている間の「利益」を守る備えがなければ、会社そのものが存続できないことがあるのです。5分類で整理していれば、この欠落は事前に発見できたはずです。

課題発見とは、特別なことではありません。リスクを整理する枠組みを持ち、それを使って現状を丁寧に見ること。その第一歩が、この5分類です。

Reference

5分類と「主な保険の例」

各分類にどんな保険が対応するかの参考資料です。商品の網羅ではなく、5分類を実務に当てはめる際の手がかりとしてご覧ください。お客様の証券をこの分類で並べ、抜けや重複を確認する「点検の物差し」としてお使いいただけます。

※ 掲載の保険名・補償内容は、5分類を理解していただくための一般的な例です。実際の補償範囲・名称・引受条件は、保険会社や商品によって異なります。

① ヒト ── 従業員と役員を守る

確認したいのは、従業員の業務中・通勤中のケガ、役員やキーマンの長期不在、私傷病による就業不能、海外出張者の事故・疾病など。

主な保険何に備えるか
傷害保険従業員・役員の急激・偶然・外来の事故によるケガ
労働災害総合保険政府労災の上乗せ(法定外補償)と、使用者賠償責任
業務災害総合保険従業員の業務上・業務外のケガや就業不能などを幅広く補償
医療保険(実損補償型)治療費の自己負担分・先進医療費・差額ベッド代などの実費
所得補償保険病気やケガで就業不能となった期間の所得の減少
海外旅行保険(出張)海外出張・赴任中のケガ・病気の治療費、携行品損害、救援費用など
② モノ ── 建物・設備・商品・貨物を守る

確認したいのは、建物・設備の火災や自然災害、機械の突発的な故障、輸送中・保管中の貨物の損害、立地に応じた水災リスクなど。

主な保険何に備えるか
火災保険(企業財産)建物・設備・什器・商品の火災、自然災害、破裂・爆発、盗難など
動産総合保険移動・保管・使用中の機械・什器などをオールリスクで補償
機械保険稼働中の機械設備自体の電気的・機械的事故による損害
建設工事保険建築工事期間中の工事目的物・資材の不測かつ突発的な損害
運送保険国内の陸・水路を輸送中の貨物の事故・盗難などによる損害
物流総合保険保管・荷役・輸送を通した貨物の損害を一貫して補償
③ 賠償責任 ── 第三者への法的責任を守る

確認したいのは、施設や業務中に第三者へ与える損害、製品・仕事の結果の欠陥、預かり物・運送物への損害、役員の経営判断に伴う賠償、情報漏洩など。

主な保険何に備えるか
施設賠償責任保険施設の管理不備や業務遂行中の事故で第三者にケガ・損害を与えた場合
生産物賠償責任保険(PL)製造・販売した製品や仕事の結果の欠陥で第三者に与えた損害
請負業者賠償責任保険工事・清掃などの請負業務の遂行中に第三者に与えた損害
受託者賠償責任保険預かって管理中の他人の財物を破損・紛失・盗難させた場合
貨物賠償責任保険運送業者が荷主から預かった運送中の貨物に与えた損害
会社役員賠償責任保険(D&O)役員が業務上の判断ミス等で株主・第三者から負う賠償責任
サイバー保険(情報漏洩)サイバー攻撃や管理ミスによる情報漏洩の賠償金・調査・対応費用
④ 利益(費用) ── 事業が止まる間・お金が入らない事態を守る

確認したいのは、事故で事業が止まる間の利益と固定費、製品回収にかかる費用、取引先の倒産による売掛金の回収不能など。

主な保険何に備えるか
休業補償保険・店舗休業保険災害等で営業できない期間の利益の損失と固定費
企業費用利益総合保険事故による営業中断中の利益損失・固定費・復旧の臨時費用
リコール保険製品の欠陥が判明した際の回収・検査・告知などの費用
取引信用保険取引先の倒産・支払不能で売掛債権が回収不能となった損失
⑤ 自動車 ── 4分類の組み合わせ

社有車・営業車は、多くの企業が加入していますが、中小企業向けのセット商品には含まれないことが多く、別契約になります。そして自動車保険そのものが、「ヒト・モノ・賠償・利益」の組み合わせでできています。

自動車保険の補償5分類でいうと
対人賠償・対物賠償賠償責任
人身傷害・搭乗者傷害ヒト
車両保険モノ
代車費用・対物超過修理費用 など利益(費用)

なお、他人の身体への損害に特化した自賠責保険は加入が義務づけられた強制保険で、これを任意の自動車保険が重層的に補完しています。

補足:複数の分類を「組み合わせた」商品

実際の商品の多くは、5分類を組み合わせて作られています。自動車保険は「ヒト・モノ・賠償・利益」が一台に組み込まれた、いわば固定の組み合わせ。一方、商工三団体(商工会議所・商工会・中央会)のビジネス総合保険制度は、「モノ」「賠償責任」「利益(費用)」を基本に、会社によっては「ヒト」を組み合わせて加入する、選べる組み合わせです(自動車は含みません)。身近なセット商品も、5分類で分解すれば「何が入っていて、何が入っていないか」が見えてきます。
Our Wish

見積もりの前に、リスクの整理を。

個人の、そして企業のリスク全体を俯瞰し、マネジメントする。もれているリスクに、きちんと対応する。それが、損害保険の提供の本来の有り様だと、私は思うのです。

しかし、それをしっかりと実践できている代理店は、まだ限られていると思うのです。そうした募集人を一人でも増やし、この提案方法を根付かせたい。当たり前のようでいて、なかなか広まらないこの提案のかたちが広まれば、損保業界の、そして代理店という仕事のステータスは、間違いなく一段上がるはずです。その一助になれればと、願っています。

Solution

ソリューションとしての「

この連載でお話ししている「課題発見」と「リスクの5分類」を、そのまま面談で使えるかたちにするソリューションとして、面談支援ツール「」を開発しています。よろしければ、動画デモをご覧ください。

Contact

ご意見・ご感想、15分程度の意見交換

連載「まずは、課題発見。」へのご感想や、代理店の現場で感じておられる課題について、ぜひお聞かせください。「自社ではこう感じた」「現場ではこういう課題がある」といった率直なご意見が、今後の連載の励みになります。

また、法人顧客のリスク整理、面談品質の向上、意向把握・記録の見直しについて、15分程度の意見交換も承っております。お気軽にご連絡ください。

なお、ここでお伝えしている「課題発見」と「リスクの見える化」を、現場の面談で実践しやすくする仕組みとして、損保代理店向けの面談支援ツールも準備しています(ページ上部のご案内もご覧ください)。ご関心のある方には、概要をご案内いたします。